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【角田 光代】の名言集|名言まとめドットコム

困難や疲労は、住み慣れた場所に帰れば消える。けれど、見知らぬ土地で蓄えた、そうしたちいさな光の粒は、時間の経過とともにますます輝きを強くする。それがその人を成長させるとか、ゆたかにさせるとは私は思っていない。ただ、静かに内に降り積もるだけ。それを一度知ってしまった人は、面倒でも、疲れるとわかっていても、無益だとわかっていても、どうしようもなく旅に出てしまう。旅に取り憑かれてしまうのだ。

旅は旅で、旅でしかないはずなのだが、こんなふうに身に染みついてしまうことってあるんだなあ。

自分の家を出て、歩き慣れた道をずーっと歩いていると、「日常の境界」が、意外によくわかる。まるで結界がはられているように、あるところから非日常ゾーンになっているのだ。つまり、そこまではしょっちゅういくが、その先はいったことがない、もしくはめったにいかない。そこからさらに歩いていこうとすると、何かしら不安になる。そんなことはないはずなのに、微妙に空気が異なっているように感じられる。もちろん言葉のわからない異国にいる不安とは異なるのだが、この先歩いていってもいいものか、というかすかな不安は、旅のそれとよく似ている。

もともとそこはただの空間だったはずで、本当は、人に区切れるはずもない。...区切られることのない場所に、差異が生じる。人は本能的にその差異を感じる。動物とはまた異なる感覚でもって。

一泊であれ、一カ月であれ、近場であれ、異国であれ、旅は、人を子どもに戻すのではないか。もちろん私たちは経験を積んだ大人だから、大人らしく振る舞う。スケジュールをこなし、その地のおいしいものを入念に調べて飲食する。振る舞いは立派な大人だが、たましいの一部は、子どもになっている。

子どもというのは残酷なほど正直だから、相性というものも、はっきりとあらわれてしまう。相性とはつまり、自分の意思ではコントロールできない好悪、得手不得手。大人は、ちゃんとそういうものを自分でコントロールして人とつき合っている。コミュニケーション能力の発達によって、その天然の好悪に自分で気づかない場合すらある。

人間は、名づけられていないものを異様におそれる生きものだと私は思っている。

失うということは、希有なことではない。ふつうに日々を暮らしていたって、私たちはしょちゅう何かを失う。だいじなものも、そうでないものも。生きれば生きるほど失うことに麻痺していく。何かをなくしても、たいしたことじゃない、と自分に言い聞かせる術を、私たちは知らずに身につけていく。

生きることは失うことと同義だ...。日々を過ごしているだけで私たちは何かを失う。失わない人生はあり得ないのだ。

失うことは、マイナスでもプラスでもなく、何かを持っていたという証である。

まとめ

今回は「角田 光代」の名言・名セリフ集をご紹介しました。

お気に入りの名言や心に響く名言は見る人によって変わります。

「角田 光代」の名言には、今回ご紹介していないものの中にも、まだまだ名言と呼ばれるものが数多く存在するでしょう。

ぜひ自分のお気に入りの名言を見つけてみてください。

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